「LOVE LIFE」監督・脚本・編集 深田晃司 矢野顕子の名曲からインスパイアされた痛い痛い物語

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TOHOシネマズ長崎8番スクリーンにて観てきました。観客は4人。1日1回12時からだだけど、少なかったね。ロビーは結構人がいてびっくり。平日昼間ですよ。さて、「LOVE LIFE」ですが、大好きな女優さん木村文乃が主演というのと、ライムスター宇多丸が結構ほめていたため、触手を伸ばしてみました。映画はいかに。

矢野顕子の曲「LOVE LIFE」

この映画は、矢野顕子の曲から物語を紡ぎ出したということです。その歌詞は以下のとおり。

どんなに離れていても
愛することはできる
心の中広げるやわらかな日々
すべて良いものだけ
与えられるように
-LOVE LIFE-

もうなにも欲しがりませんから
そこに居てね
ほほえみくれなくてもいい でも
生きていてね ともに

もうなにも欲しがりませんから
そこに居てね
ほほえみくれなくてもいい でも
生きていてね ここに

どんなに離れていても
愛することはできる
永遠を思う時に
あなたの笑顔抱きしめる
かなしみさえよろこびに変わる
-LOVE LIFE-

作詞・作曲 矢野顕子

同名のアルバムの最後の曲ですね。

ところで、「LOVE LIFE」とはずばり「セックス」のことなんですね。恋愛・性生活とも訳されてますが、性的な愛のニュアンスが強いわけですね。ところが、歌詞をみてもそのような文言はないように思われます。

映画でも濡れ場一つ無く、キスシーンだけです。ですから、「LOVE LIFE」とは、直訳で「愛のある生活」ととらえるのでしょうか。

映画の監督を務める深田晃司は、アルバム「LOVE LIFE」について「『愛はたくさん』というこれもまた大変な名曲の後、ひとときの無音を挟んで始まったイントロのピアノの響き一つ一つがもう素晴らしくて、一気に楽曲の世界に引き込まれ、そして、祈りの所作のように静かで厳かなピアノに導かれ続いた歌声の伸びやかさ、美しさたるや。そのときの衝撃と感動は今も忘れられません。間奏での矢野さんのピアノとパット・メセニーのギターの息詰まるような緊張感に満ちたハイレベルなセッションもまた、思い出しても鳥肌が立つ素晴らしさだった。それから20年間、この歌を聴き続け、一度たりとも飽きたと思ったことはありませんでした」

ここから引用

この監督のコメントからすると、矢野顕子のピアノに惹かれているように思われます。歌詞の中身よりも、歌声の美しさや伸びやかさを賞賛しています。歌詞はあまり関係ないのでしょうか・・・。これはよく考えてみる必要があります。

物語

妙子(木村文乃)が暮らす部屋からは、集合住宅の中央にある広場が⼀望できる。向かいの棟には、再婚した夫・⼆郎(永山絢斗)の両親が住んでいる。小さな問題を抱えつつも、愛する夫と愛する息子・敬太とのかけがえのない幸せな日々。しかし、結婚して1年が経とうとするある日、夫婦を悲しい出来事が襲う。哀しみに打ち沈む妙⼦の前に⼀⼈の男が現れる。失踪した前の夫であり敬太の父親でもあるパク(砂田アトム)だった。再会を機に、ろう者であるパクの身の周りの世話をするようになる妙子。
一方、⼆郎は以前付き合っていた山崎(山崎紘菜)と会っていた。哀しみの先で、妙⼦はどんな「愛」を選択するのか、どんな「人生」を選択するのか……。

公式サイトより引用

この物語は、役者たちの割に淡々とした演技で進んでいきます。でもそこには、様々な社会問題が詰め込まれてます。「ろうあ者」「韓国人」「ホームレス」「こぶつきの女との初婚を認めない親」などなど。

それらに対して「こうであるべきだ」などの主張はありません。カメラは淡々と切り取っていきます。主人公たちはその現実の「人生」に向き合わざるを得ません。

監督のコメントを読むと、「LOVE LIFE」は「愛」と「人生」という二つの言葉をつなげたもの、のようにとらえているみたいです。「性生活」ではないんですね。主人公たちが遭遇する出来事の末に「愛」と「人生」にどう向き合うかを描いたということでしょうか。

エゴイスト

登場する人物たちは、周囲の人に気遣いをしながらも、最終的にはエゴイストであるということを随所で感じさせてくれました。

妙子(木村)と二郎(永山)の結婚を認めようとしない義父(田口トモロヲ)は、妙子に対し「中古でもいいものとそうでないものがあるだろう」とひどいことを言います。しかし、誕生日を祝ってもらい、妙子から花束をもらうと笑顔を見せます。カラオケで7番まである歌を歌い始めます。

義母ほど結婚に反対ではないと思われる義母も、妙子に「本当の孫をはやく見せてね」や自分たちが住んでいた集合住宅の部屋(思い出の)に「本当の孫でない子の遺体を置いてほしくない」など、思わず本音の部分が出てしまいます。

パクは韓国の父が危篤で帰国するために旅費を妙子たちに借ります。しかし父の危篤は嘘で、本当は自分の息子に会いたいという、かなり身勝手な考えと行動をします。

二郎はふってしまった部下(山崎紘菜)に会い、キスしてしまいます。2人で会っているときに、地震が起こり、妙子を心配し電話します。おいおいという感じです。

パクを選んで韓国に渡った妙子。韓国でのとんでもない結末に、二郎のものに戻ります。

人間って身勝手なものなのですね。このエゴイストである人間同士が一緒に暮らす際に配慮すべき事は何なのでしょうか。映画はこのことを考えさせてくれるようにも思えてきます。

名シーン

パクをほっておけず、韓国までついていった妙子は、パクの前の息子の結婚式場に行きます。しあわせそうな息子、うれしそうなパクを前に、妙子はどうしようもない気持ちにさらされます。「なんて私はバカなの」「これからどうするの」そんなやるせない複雑な心情を、カメラは妙子の表情を一切映さず、結婚式のカラオケにあわせて、ふらふら踊る後ろ姿だけで表現します。

とつぜん降ってくる雨、結婚式の飾りの黄色い風船、そして誰もいなくなり、最後に妙子の表情が切り取られます。これが、ポスターのスチール写真です。このシーンは大変印象的です。

集合住宅にもどった妙子は、二郎から「どうするこれから俺たち」と問われます。妙子は答えず、「朝ご飯食べてないでしょ。何か作る?」。二郎は腹減らしに散歩に行こうと言います。ベランダから室内を映していたカメラは2人が出ていくと、180度向きを変えて外の風景を切り取ります。天気が良く、気持ちのいい朝です。

やがて、2人がカメラに入ってきて、歩いて行きます。途中二郎と妙子が違う方向に行こうとしますが、妙子が方向を修正して二郎についていきます。この何気ないシーンは、まさに「人生」と向き合って互いが少しずつ方向を修正しながら「愛」を育んでいくことを示しているようにも思えました。いいシーンです。

samon
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さて、長くなりましたがこうやって振り返ってみると、この作品の良さが感じられてきたように思えます。大好きな木村文乃の笑顔はほとんどないのですが、彼女の演技の深さを感じられたともいえるでしょう。痛快な「7人の秘書(主演:木村文乃)」の劇場版予告もありましたが、ちょっとこれは劇場に足を運ぶかは疑問ですが。とまれ、本作「LOVE LIFE」映画に引きこまれ、ゆすぶられ、考えさせられる作品であることは間違いありません。機会あればぜひ御覧ください。この監督さんにも要注目。

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